JICAパートナープログラムプロジェクト (JICA草の根技術協力事業 2017-19)  ラオス・セポン郡遠隔地農村部の母子保健サービス支援事業・国内最終報告会  開催のお知らせ

2017年よりスタートしたラオス・セポン郡における母子保健サービス支援事業(JICA草の根技術協力事業)が本年8月で一旦の区切りを迎えるにあたり、事業実績や課題などについて総括します。興味、関心をお持ちの皆様のご参加をお待ちしています。なお、会場の都合上、メールでの事前申込をお願いいたします。

日時:2019年 8月24日(土) 午後4時~6時 (受付開始 午後3時半)
場所:長崎大学 東京NCGMサテライト
   〒162-8655 東京都新宿区戸山1丁目21番1号 
   国立国際医療研究センター 情報センター2F
   TEL:03-6278-9970
会場へアクセス
   こちらの地図を参照してください(長崎大学ウェブサイト)。
   
   
地下鉄を利用の方:
1)都営大江戸線「若松河田」より徒歩約5分
2)東京メトロ東西線「早稲田」より徒歩約15分
都営バスをご利用の方:
1)「宿74系統」新宿から、医療センター経由女子医大行き、
  「国立国際医療研究センター前」下車、徒歩約1分 
2)「橋 63系統」 大久保・新大久保駅から、新橋行き、または市ヶ谷・新橋駅から、小滝橋車庫行きに乗り
  「国立国際医療研究センター前」下車、徒歩約1分 
3)「飯62系統」飯田橋から小滝橋車庫行きに乗り、
  「国立国際医療研究センター前」下車、 徒歩1分

プログラム(予定)

開会挨拶
 森田英太郎(アジア保健教育基金・理事/保健支援事業担当)
現地活動報告
 佐藤 慈(前アジア保健教育基金・研究員)
今後の活動計画(持続可能性とスケールアップ)
 小林 潤 (琉球大学)
現地からのメッセージ
 Dr. Tiengkham Pongvongsa (ラオス・サワンナケート県保健局次長)
プロジェクトの写真紹介
討論・意見交換
 JICA東京・JICAラオス事務所(予定)+参加者全員
閉会の言葉
 門司和彦(長崎大学)

参加費無料・定員30名。

申込方法

下記メールアドレスまで氏名(必須)および所属先(任意)を明記の上、お申込みください。
info[at]ahef.jp 
[at]は@に変えてメールをお送りください。

その他、お問い合わせは以下までお願いいたします。
moji.k273[at]gmail.com 担当 門司 
[at]は@に変えてメールをお送りください。

保健支援プロジェクト「ラオス・セポン郡遠隔地農村部の母子保健サービス支援事業」

 この事業ではラオス中部のサワンナケート県セポン郡の農村部に住む妊婦さんたちへの産前ケアに焦点を絞った支援を行ないます。このプロジェクトは2015年度JICA(国際協力機構)の草の根技術支援事業として採択され、2017年8月10日に正式契約を結びました。

〇実施期間:
2017年9月1日~2019年8月31日(2年間)

〇背景:対象地はラオス政府により貧困部地域に指定されています。住民の大半を占める少数民族が山間部に散在する村々になかば孤立して暮らしており、女性は生涯に平均5~6人の子供を出産しますが、妊産婦死亡率、乳幼児死亡率ともに全国平均より高くなっています。
 その原因は、貧困やアクセスの悪さよりも、むしろ人々が妊娠出産を自然のこととしてとらえ、医療・保健サービスの利用を求めないことにあります。各村には「村落保健ボランティア」がおり、妊婦の存在を村を管轄する「保健センター」職員に連絡して妊婦健診に誘導することになっていますが、期待通りには機能していません。このプロジェクトでは、以上のような課題の解決のため、村落保健ボランティアと、地域の保健医療サービスを担っている保健センター職員の能力及び連携の強化を図ります。

〇目的:対象となる村々で、村落保健ボランティアと保健センター職員の活動を通じて、妊婦さんたちの健康に対する村人たちの意識が高まり、安全な出産への理解が深まることを目的とします。

〇活動内容:

  1. 村落保健ボランティアと保健センター職員に向けた教材やツール(胎児心音計等)を整備・強化します。
  2. 妊婦さんたちへのコンタクトが難しい男性保健ボランティアしかいない村では、新たに女性ボランティアを選んでもらいます。
  3. セポン郡保健事務所職員、保健センター職員、村落保健ボランティアチームに対し、妊婦さんたちへの適切な保健指導が行なわれるよう、また相互の連携がうまく行なわれ、産前検診率が向上するよう、研修を実施します。

〇実施にあたっての考え方:
 このような発展途上国への保健支援事業で大切なことは、プロジェクトが成果を上げることはもちろんですが、その終了後も改善された状況が継続・発展してゆくよう配慮することです。「外国のNGOがお金を使って活動している間は良かったが、引き揚げた後は元に戻ってしまった」というような事態は避けなければなりません。そのためには、カウンターパート(相手側行政機関)であるサワンナケート県保健局をはじめとする、現地の人々との協働がもっとも重要です。現地の状況をできうる限り把握・理解し、現地の人々の意見を尊重しながら、また現地に人々には私たちのプランを十分に理解してもらいながら、仕事を進めなければなりません。時間と労力はかかりますが、これが「自律的で持続的な発展」につながる唯一の道だと、私たちは考えています。

ラオス出張記(2016年10月26日~11月2日)

森田英太郎(保健支援担当理事)

 私たちは毎年秋にラオスで行われる「国家保健研究フォーラム」(National Health Research Forum (NHRF))に対する財政支援を行うとともに、何人かのメンバーが会議に参加し、その機会を利用して支援対象地で様々な活動を展開しています。
 2016年のフォーラムはラオス中部サワンナケート市で開催され、会議日程に続いてセポン郡で新プロジェクトの説明会と、TOT(研修講師養成研修)を行いましたので、その内容をお伝えします。参加者は北村均・代表理事、高野行雄・事務局長、森田英太郎・保健支援担当理事の三名に加えて、理事・会員5名が他機関から参加しました。

1)10月27~28日:第10回ラオス国家保健研究フォーラム
 今年のフォーラムには、国外からの参加者を含めて150人以上が出席していました。発表者34名(AHEF会員からの発表1件)、ポスター掲示55枚(AHEFから1枚、他に会員のポスター1枚)など盛りだくさんな二日間でした。フォーラムでの発表の内容は栄養状態、熱帯感染症、若年者の健康、研究の現状、ウィルス学など多岐にわたり、専門家でないと分からない発表もありましたが、全体として年々水準が上がってゆく印象を受けました。
 27日夜はフォーラム主催の歓迎会、28日夜は、AHEF主催で内輪の夕食会を開きました。

2)10月29日:ラハナム地区(*1)保健センター(*2)訪問。
 2013年に訪問した時には扉が閉まっており、稼働状況について若干の疑問も感じられましたが、今回訪問してみると外装のペンキが塗りなおされ、看護師7名(うちプライマリヘルスケア上級資格者2名、助産師資格者2名)に非常勤研修医1名が勤務する体制となっていました。年間の外来患者数は約2,000名、保健センター入院が156件、小手術86件、担当地区内の出産98件とのことでしたが、センターでの出産は3件のみで、残りは郡病院とのこと。このほか、予防接種、母子保健、健康・環境衛生指導などにも実績を上げているとの説明がありました。ちなみにラハナム保健センター担当地区の人口は7,900人、1,300世帯、上水道とトイレの普及率はそれぞれ99%と82%です。悪路だった国道13号線からの道も舗装され、アクセスは格段に良くなっていました。この保健センターはAHEF発足当初に修復を支援した思い出深い場所ですが、重点保健センターとして扱われるようになり、機能が充実した現在、支援の重点はより辺鄙な地区に向けられるべきではないかとの印象を受けました。
 センター訪問後AHEF出資でバーシ(*3)、北村代表理事が挨拶しました。

3)10月30日:サワンナケートからセポンに移動。
 舗装が傷んでいて時間がかかった国道9号線もかなり修理が進んでいました。

4)10月31日:午前:セポン郡病院で新プロジェクト「母子保健サービス支援事業」説明会
 セポン郡副知事、同郡保健局長、ラオス国立公衆衛生研究所、県保健局、郡保健事務所、保健センター12か所から職員が参加してくれました。県保健局マラリアセンター長からの事業概略説明の後、各部門から多くの意見・要望がありましたが、主なものは、①村落保健ボランティア(Village Health Volunteer)の読み書き能力の問題、②妊婦数の正確な把握が必要、③妊産婦死亡のあった村を重点に、④保健センター職員・保健ボランティア双方の能力向上と協働が重要、⑤村のコミュニティの参加が肝要、⑥村から保健センターへのアクセスの問題、など多岐にわたり、深い関心を持ってくれていることが分かるとともに、責任の重さを実感した会議でした。
 最後に郡副知事から、郡政府はプロジェクトの目的と、実施方法について提案内容を全面的に支持する。一定の成果がみられた場合には対象エリアを拡大すべきである。などのコメントがありました。最後に森田保健支援担当理事が挨拶をしました。

午後:研修センター(*4)に場所を移し、郡病院、保健センタースタッフ研修会
 県保健局スタッフによる講義に始まり、AHEF理事・会員からもレクチャーと発表を行いました。また今回の新プロジェクトに協力をお願いしている現地NGOのメンバーから、導入予定の胎児心音計についての説明がありました。これを使用することにより、胎児の心拍数から妊娠経過が正常か否かの判断がつくとのこと。
 セッション終了後、子豚の丸焼き、カオニャオ(蒸したもち米)の接待を受け、大変美味しい夕食となりました。

5)11月1日:セポン研修センターでTOT(研修講師養成研修)
 県保健局スタッフ4名による郡保健事務所職員・保健センタースタッフへのレクチャーがありましたが、内容は、プライマリヘルスケア、母子保健、健康教育等です。妊産婦死亡の主な原因は、①出産後の出血、②出産時の事故、③妊娠中毒とのこと。トレーニングの運営・管理方法について、AHEF理事の一人によるレクチャーも行われました。県保健局によると、保健省が推奨している産前検診は10回以上であり、都市部ではこれを実現できているが、農村部では最低4回を目指したいが実現できていないとのこと。今回の事業の対象となる保健センターのすべてに助産師資格を持った看護師が配置されているので、スタッフ側の準備は一応整っているようです。その他、保健ボランティアの具体的業務(栄養・環境衛生・健康指導、予防接種・母子保健の補佐、基本的な病気治療、薬品管理)についても知ることが出来、我々としても意義深い研修会となりました。

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(*1)サワンナケート県ソンコン郡ラハナム村、サワンナケート市から車で南へ3時間ほど。
(*2)Health center もしくは health post と呼ばれる日本の保健所に似た施設。簡単な治療に加えて、担当地区の人びとへの予防接種、栄養・健康・衛生指導、母子保健サービス、疾病統計の作成など幅広い役割を負っている。ラオス保健医療システムの最前線。
(*3)baci タイ、ラオスを中心に東南アジア諸国で行われる宗教行事。祈りを唱えながら相手の手首に白い木綿糸を巻く。起源は仏教伝来以前に遡ると言われる。
(*4)2013年10月、在ラオス日本大使館の「草の根無償資金協力」によって建設された地域保健医療従事者のための研修センター。設立以来、AHEFはその運営を支援している。